シャンパーニュ地方オーヴィレール修道院内の碑、そこに眠るのは、かのドン・ペリニョン修道士。
 
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ヴェネディクト派修道士のドン・ペリニョンDom Pérignonは1668年にここオーヴィレール修道院の出納(すいとう)係に任命されました。
ドン・ペリニョンの生涯はフランス王ルイ14世(1638-1715)とほぼ重なり、当時はフランスがヨーロッパ大陸で権勢を誇っていた時代です。
 
ワインはキリスト教の儀式にとって欠かせないものであると同時に、当時の教会にとっては収入を得るための貴重な商品でした。
したがって修道士たちは並々ならぬ熱意をもってブドウを栽培し、ワインを醸造しました。
 
さて、シャンパンの発明者とされるドン・ペリニョン。
彼がシャンパンの発明に大きく貢献したことは確かなのですが、一方で、やや神格化されたことで事実とは異なる話も多いようです。
そうした中でも信憑性の高いエピソードは、彼が造ろうとしていたのが、なんと「泡の出ないワイン」だったということです。
シャンパーニュ地方は冷涼な気候の地域であり、秋にアルコール発酵を終えることのできなかったワインが、春になって再び瓶の中で発酵することがありました。
こうなってしまうとワインの質も安定せず、また、瓶内で発生した炭酸ガスの圧力で瓶が割れたりと危険です。
そうしたことがないよう、ドン・ペリニョンはさまざまな工夫を凝らしたそうです。
彼がシャンパンの質の向上に貢献したことは確かです。
ところが、彼の意に反して、当時の英国やフランスのサロンでは、発泡酒のシュワシュワとはじける泡の感じが大評判になったというのです。
 
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修道院は最寄りのエペルネ駅から車で10分ほどですが、この日は訪れる人も少なくひっそりとしていました。
 
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「修道士の小道」、市販の絵はがきにもこのアングルのものがありました。
 
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丘からはブドウ畑が見下ろせます。
黒ブドウが色づいています。
 
その世に名を轟かすドンペリことドン・ペリニョン。
こうした背景に思いを馳せると少しイメージも違ってきませんか。
以上、鈴木でした。
 
*ドン・ペリニョンについては、ヒュー・ジョンソン『ワイン物語』小林章夫訳、2008年、平凡社、中巻第21章「最初の完全主義者――シャンパーニュの誕生」(pp.125-147)を主に参照しています。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
ルーブル美術館やオルセー美術館など、パリには世界に名だたる美術館があるのですが、今回訪れたのは、そした巨匠とはまるで正反対のこじんまりとした博物館。
こちら何の博物館かと言うと、言語や言語学を扱った博物館で、名称をムンドリングアMundolinguaといいます。
 
この博物館、もちろん学術的な意義はあるのでしょうが、まあそれはそれとして、むしろ今回印象に残ったのは、随所に見られるシュールな要素や、巨匠には絶対ない「ゆるい」展示物です。
まさに博物館界のゆるキャラといった感じです。
 
 
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一昔前の散らかったオフィス?
いえいえ、これもれっきとした展示物です。
なんでも言語を記録する媒体の変遷の歴史なんだとか。
埃にもまみれて、時代感がリアルです。
 
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ホラーハウス?
どうやら発音のメカニズムの説明のようです。
展示に洋服用のハンガーを多用してます。
 
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いったいこれはなんでしょう?
魔除け?
よくよく見ていくと「言語は芸術artでもあり、情報infoでもある」という意義のあるご指摘。
それにしてもキューブ状のモビルはいったい何を意味しているでしょうか?
ここにもハンガーです。
 
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モノがあふれかえります。
どこ&なにを見たらよいのでしょう。
ここの通路を通ると、かなりの頻度で手すりに腰をぶつけます。
 
入場料もたった7ユーロ。
パリにお越しの際は訪れてみてはいかがでしょう。
以上、まもなく帰国の鈴木がお送りいたしました。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
アルザス地方ストラスブールを訪れました。
 
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伝統的な舞踏の披露。女性のリボンは、年齢や、未婚か既婚等といった女性のステイタスによってそれぞれ異なるタイプがあるそうです。
 
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お土産アルザスちゃん
 
ここストラスブールはドイツとの国境の都市で、町の風景もドイツに近い印象があります。
 
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何気なくシャッターを切っても、こんな写真が撮れます。
ストラスブールには世界遺産に登録された地区もあり、美しい町並みがいたる所に見られます。
 
すぐお隣がドイツですから、ドイツからの観光客も多く、フランス語とドイツ語の二言語が併記されている
掲示が多く見られます。
 
アルザス地方は、ドイツとの国境にあることから、両国間の戦争等によってドイツ領であった時期もありました。
そうした経緯のため、アルザスの人々には独自の帰属意識があるようです。
 
さて、アルザスはワインの銘醸地(めいじょうち)でもあります。
フランスでもとりわけ降水量が少なく、ブドウ栽培に適した土地なのです。
 
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丘の上から見下ろしたブドウ畑と古い町並み。奥に見えるのがヴォージュ山脈。
 
訪問したワイナリーのひとつAnna et André Durrmannでは、土壌による違いを確認しつつ試飲です。
また今回も本気です(笑)
 
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土壌を形成する石。これらによってワインの味に違いが生じると言われています。
 
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また、その年(ヴィンテージ)のブドウの出来具合によっても、ワインの味は大きく左右されます。
 
私には、ブドウの出来のそれほど良くない年の方が好ましく感じられたので、恐れながらもその事を
率直に言うと、ニヤッと微笑みを浮かべながら、それぞれの年の味の必然性について説明して下さいました。
収穫にベストな時期を見極め、そのブドウのポテンシャル(可能性)を最大に引き出す、
結果、年によって個性の異なるワインができる、というお話でした。
ブドウの出来の良し悪しは、ワインの良し悪しにそのままつながらないということなんですね。
わかりました、ムッシュ。
 
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ワインは工業製品一般とは異なり、生産ラインをフル稼働させたからといって生産量を急に増やすことができません。
畑で栽培されるブドウが原料ですから、土地からの影響を大きく受けます。
また、どこの畑のブドウを使ったのか、ということが重要な意味を持っていて、同じ品種のブドウを
使っても、特定の区画から作ったものが他よりも数倍高い価値を持つことも珍しくありません。
このワイナリーでは「環境をデザインする」するパーマカルチャーpermacultureの理念に根ざしたワイン生産を行っており、そうした環境への配慮についてのお話も興味深く拝聴しました。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
7月14日。
フランスの祝祭日のうちで、最も重要な日をあげるとすれば、おそらくこの日になるでしょう。
1789年7月14日、パリの民衆がバスティーユ牢獄を襲撃したことがフランス革命の発端となりました。
その後、さまざまな経緯はありましたが、この革命は、後の共和制樹立の発端となりました。
 
現在では7月14日はフランス共和国の成立を祝う日になっており、各地で様々なイベントが催されます。
その中でも、とりわけ大きな行事は、パリのシャンゼリゼ大通りで行われるパレードです。
 
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パレードの主な内容は、こうした軍事パレードですが、中でもとりわけ人気のあるのが消防士です。
この日の夜には、パリの消防署のいたるところで、一般の人も参加できる消防士さんとの
ダンス・パーティーがあります。
 
今年のパレードには、トランプ米大統がゲストで参加し、これがメディアの取り上げるところとなりました。
 
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また、この日からちょうど1年前には、南仏ニースでトラックを使ったテロ事件があり、
そのことを一面に取り上げる新聞もありました。
 
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エッフェル塔では花火が上がります。
自宅近くの見晴らしの良い通りに出て見ようとしたら、すでに多くの観衆が詰めかけていました。
 
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ここは私の住んでいる自宅からすぐ近くで、実はエッフェル塔からはかなり距離があるのですが、
それでもこの混みようです。
あらかじめ配備された警備員の姿も多くありました。
 
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この時期のフランスは、日が暮れて暗くなるのが夜10時過ぎです。
花火は夜11時頃から始まり30分程度続きました。
パリは東京に続く2024年オリンピックの招致活動を行っていて、
ここからはよくわからなかったのですが、そのことをモチーフにした花火もあったようです。
では、また近々。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科

クイズ! 次の短歌Aと短歌Bでは、どちらが良い歌でしょうか?


A 空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋はそういう状態
B 空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋は散らかっている
(穂村弘さんの『はじめての短歌』を参照しています。)

 

鈴木です さりゅー

文章の書き方を指導をされたことってあるでしょ。
そんな時、先生に「もっと簡潔に」とか「もっとわかりやすく」とか言われませんでしたか。
たしかに、そうした簡潔で平明、かつビジネスライクな作文が求められる場面は少なくありません。
連絡のメールもしかり、集合の場所や時間などの用件が正確に伝われば事足りる。
休講の掲示もそうだね。何曜日何限が休講ってわかれば、ラッキーってなるし?!

でもね、そうではない世界があるんです。わかりやすくちゃだめな世界が。

 

冒頭の短歌のクイズ、正解はAです。Aの方が良い短歌。
Aの短歌「そういう状態」と言われるといろいろ想像が広がるけど、一方で、

Bの短歌「散らかっている」にはそんな余地がない。

「散らかっている」と言われれば「ああそうですか」と納得して終わり。

このAの短歌を作った平岡あみさんは当時中学生くらいだったそうです。

たしかに、「そういう状態」ってどんな状態なのかすごく気になりませんか?
なにかただならぬことが起こっている感じ。

 

でも、これって、ビジネス文書や実用書のお手本にかなり逆らってますよね。

一番肝心なところが「そういう状態」、つまりXのままなんだから。

詩歌の価値が、モノの交換を扱う経済の価値と異なるのはこの点です。

経済上のコミュニケーションの利点は、なんと言っても、

価値が貨幣というグローバルな交換価値に還元されること。

要するにHow much is this?というコミュニケーションのスタイルで、

国境を超えてだれとでも通じ合える。

どんな得体の知れないものでも、その値段がわかるとちょっとほっとするでしょ。

その一方で、私たちはこうしたグローバルな価値の世界とは別の

もうひとつの価値の世界にも属しています。

その世界とは、交換可能な価値に還元できない価値の世界。
唯一無二の価値の世界。

 

会社では課長の代理は必要。課長は同じ内容の仕事ができる人がいれば代わってもらえる。

でも、その人が帰宅してお父さんになると、お父さんに代わりはいない。
それに、お父さん代理がいつも控えている家庭なんて困るでしょ。
同じ人物が、ある時は課長で、ある時は父親というように二重の生を生きている。

 

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「ぼくにとって、きみはこの世界でたったひとりの男の子になるよ。
きみにはぼくが世界でたった一匹のキツネになるんだね。」
(サン=テグジュペリ『星の王子さま』より)

 

交換できる世界と交換できない世界、というように二重の世界が交錯している。

労働・生産・消費などは前者の交換できる価値をやり取りする世界。
交換できるからこそ価値が生まれる世界。こちらも生きていくのには不可欠。

 

その一方で、詩歌は交換できない価値を扱う世界。
他のもので置き換えることのできない唯一無二の意味や価値を重んじる世界。
その証拠として「××は○○を意味しています!」などと明言せずに、

肝心なことをXにしたまま読み手に差し出した方が良い歌になります。

ためしに下の二首でどこがそのXに相当するかわかりますか?

 

たちまちに君の姿を霧とざし或る楽章をわれは思ひき     近藤芳美
貪欲な兎をゲージに飼っておくそういう罪を毎日犯す     鈴木晴香

 

恋人の姿が霧に隠れた時、ふと聞こえてきた「或(あ)る楽章」って、

いったいどんなメロディーなの? それってだれのなんていう曲?

 

「貪欲な兎(うさぎ)」っていうけど、それってどんな兎?
その兎をおりに閉じ込めて飼うことって、いけないことなの? 
もしかしたら逮捕されちゃう?

 

とか、具体的にはわからないまま。

でも、そこがいいんです。いろいろ想像できちゃうし。
それに、この場合の想像って、でたらめな妄想とはちがって、ある程度は共有したり共感できる要素がありませんか? 
「あーあのことじゃないかな」と思い当たる。

こうした詩歌の価値について歌人の穂村弘さんが書いた本、『はじめての短歌』。

 

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鈴木ゼミの教科書の一冊。
短歌の入門書という形をとっていますが、あまりそんな感じはしません。
むしろコミュニケーションに悩んでいる人におすすめします。

コミュニケーション用の「伝わる言葉」と、詩歌の「印象に残る言葉」、

この二つの言葉の世界ってどうなっているの?ということがわかります。
ここぞという時に人に差をつけたい時のマニュアルです。意外なほど用途は広いね。
本書の書評を書きました。以下からダウンロードできます。こちらも是非。


鈴木隆芳書評、穂村弘『はじめての短歌』in「大阪経大論集」第68巻1号

鈴木隆芳
経済学部 経済学科
さりゅー 鈴木です。
私の住んでいるパリ14区。
いわゆるおしゃれなパリからは少し離れた庶民的な地区です。
 
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写真に撮るとそれなりに絵になるけど、普通のパリの町並みです。
それでも、あえて特徴をあげるとすれば、小売店から成る商店街が元気なことです。
 
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肉屋
フォアグラも日本に比べられたら驚くほど安い。
ソテーしてパンに挟んで豪快に食すもよし。
パテをアテにグラスを傾けるもよし。
 
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果物屋
なぜここにアスパラガス?! ややカオスな陳列ですが商品は充実しています。
スイカはフランス語でパステック!
勢い良く切るとそんな音が聞こえそうです。
 
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チーズ屋
本日のおすすめが看板に書かれています。
4品目の中にはイタリアやギリシアのチーズもあります。
こうしたチーズ屋では量り売りが基本です。
「少しでいいから」って言うのに、いつも大きく切ってくれちゃいます。
 
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行列のできるパン屋さん。
行列の理由は、パンが美味しいからと、お会計の作業がスローだから。
バゲット(フランスパンね)が1ユーロ(約124円)。
 
そして、こうした商店街の中にスーパーマーケットもあります。
 
 
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モノプリという大手チェーンのスーパー。
スーパーですから、もちろんここには肉も果物もチーズもパンも売っています。
それでも小売店にはお客が絶えません。
 
この界隈がことさら特別というわけではなく、こうした商店街がパリには多くあります。
場所によっては、マルシェ(市場)が出たり。
 
大手資本のスーパーと小売店が共存できているのには、さまざまな事情があるのでしょうが、
まあ、これもパリの魅力のひとつです。
 
あろー あびあんとー
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
ぼじゅ
鈴木です。
フランスでは5月1日にスズランmuguetを贈る習慣があり、町のあちこちでスズランを売る人を見かけます。
 
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5月1日はまたメーデーでもあり、労働者が自らの権利を訴え、連帯を呼びかける日です。
 
それと前後して、フランスでは4月23日に大統領選挙の第1回投票が行われ、
マクロン氏とルペン氏が5月7日の決選投票に進むことになりました。
そして5月8日には両氏による決戦投票が行われ、マクロン氏が大統領に選出されました。
得票率は第1回投票ではマクロン氏23.75%、2位ルペン氏21.53%、
第2回投票ではマクロン氏66.08%、ルペン氏が33.94%。
 
予想どおりマクロン氏が勝ったとはいえ、極右政党である国民戦線のルペン氏が、
なぜ他にも有力な候補がいる中でこれだけの票を得たのかは少し考えてみる必要がありそうです。
 
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「ユーロは死んだ」顔写真横の発言
 
この新聞を読む限り、ルペン氏の経済政策上の主張はユーロからの離脱ではなく、
欧州中央銀行に対してのフランス政府の権限の拡大にあるようです。
氏が敵対視しているのは猛寧なグローバリゼーションmondialisation sauvageなのです。
 
昨年6月に英国ではユーロからの離脱Brexitが可決されました。
また、米国では移民に対してトランプ大統領が否定的な発言を繰り返してきました。
 
グローバリゼーションを下支えしてきたのは、国境を超えた通貨や労働力の流動性ですが、
今、こうした流れに変化が起きています。
 
1980年代のサッチャー政権やレーガン政権が推奨した自由主義経済は、
市場原理を優先する一方で、社会保障費を削減してきました。
税金を安くして、医療費や保健などの分野で個人の裁量の域を拡大したのですね。
そこで実現したのが「小さな政府」。
法人税も安くなるので、企業活動にとっては都合の良い事態です。
法人税の安い国の企業と、法人税の高い国の企業が競合した場合、当然前者が有利ですから。
したがって、政府は自国の企業の国際競争力を高めるために「減税競争」をするはめになりました。
税率が下がれば、貧富の格差の拡大が生じます。
税金で持っていかれる額が少ないほど、手もとに多くのお金が残りますね。
格差じたいが良いのか悪いかは判断の分かれることですが、国への税収が減ることで
社会保障などの再分配に回る予算も減るとすれば、下位の階層に属する人にとっては、
よりシビアな社会になります。
富むものだけが質の良い教育や充実した医療を享受できる社会。
 
『21世紀の資本』の著者トマ・ピケティはこうした事態を危惧しつつ、
富裕層の資本の実態を明らかにすることで、課税による再分配を促すべきだと主張しています。
 
また人口学者エマニュエル・トッドは、英国のEU離脱、フランスでの国民戦線の支持拡大、
米国のトランプ政権は、国家(ネイション)が役割を回復しようとする中で起きた
一連の動きであると言っています。
トランプの大統領のかつての対立陣営のバーニー・サンダースが主張していたことも、
表面上は対立しているかのように見えて、実際は社会保障という国家機能の回復であると。
こうした動きは、グローバリゼーションに傾倒しすぎた社会に対しての反発であると言えそうです。
 
グローバリゼーションが目指す市場経済と、国家が担う再分配は
バランスを取りながら社会を形成してきたことは確かです。
その一方だけに過度に傾倒すとどんな困った問題が生じるかについても様々な教訓があります。
 
したがって、各所に見られるグローバリゼーションに待ったをかける動きを
反時代的なものや退行的なものと一概に決めつけるのは早計なようです。
 
こうしたテーマを扱った
エマニュエル・トッド『問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論』堀茂樹訳(2016年)
の書評を書きました。
無料で何度でもダウンロードできます。よかったら読んで下さい。
 
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
ぼじゅー
鈴木です。
フランス中部ロワール河流域のトゥールTours市から電車で1時間弱、シノンChinonの町を訪れました。
 
ここシノンには、かつて英仏百年戦争の頃、ジャンヌ・ダルクが後のフランス王になる
王太子シャルル7世に謁見したエピソードで有名なシノン城があります。
城とはいっても、どちらかというと砦や要塞に近い外観で、観光ガイドにも
「要塞」forteresseと表記がありました。
 
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歴史を感じますね。
古城感が本気です。
 
このお城の前に、もうひとつシャトー(≒城)を訪れたのですが、
こちらはシャトー・ド・ラ・グリーユChâteau de la Grilleというブドウ畑を所有するシャトー。
 
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こちらではブドウ畑と醸造設備を見せてもらいました。
畑を歩きながら生産者のカトリーヌさんから説明をうかがいます。
この日は他に訪問者もなく私たちだけのためのレクチャーです。
 
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太い台木から細い枝が1本出ているのがわかりますか?
もう芽が出ていますね。
 
それにしても、なんでこんな慎ましい感じの枝なのかと思いませんか。
もっとたくさん枝を生やした方が収穫量も上がるのに、って。
 
栽培や醸造方法については細かい規定があって、ここでも政令によって
枝1本あたりの芽の数の上限が決まっています。
ブドウは剪定(せんてい)を施して、生育を管理すると実の質が良くなるからなんですね。
 
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ブドウの病害虫の説明。
ブドウにはさまざまな病害虫があって、それらとの戦いにも長い歴史があります。
 
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地下の醸造所での醸造方法についての説明。
政令によって義務づけられていることと、生産者の裁量に任されていることの区分や、
ステンレスタンクと木樽の使用比率など実践的なお話をうかがいました。
 
いろいろと質問しながらお話をうかがっていたところ
「ワインの仕事をしていますか?」とたずねられました。
「光栄です、マダム」
 
最後はカトリーヌさんも一緒に試飲です。
試飲は実際に飲むわけではなく、色、香り、味をチェックした後、吐器に吐きます。
 
醸造方法による出来のちがいが問われます。
それを生産者の目の前で述べるわけですから、なかなか緊張します。
8種をその場で開けてくれました。
実は、私、(一社)日本ソムリエ協会ワイン・エキスパートの資格を持っていまして、
試飲には多少の心得があるのですが、それでも、これほど緊張する試飲はめったにありません。
 
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ここロワール地方では20%前後が輸出されるとあって、シャンパーニュ、ボルドー、
ブルゴーニュといった名だたる銘醸地(めいじょうち)に比べると
国内で消費される比率が多いと言えるでしょう。
とはいえ、おおむねフランスのワインは、早い時期から世界商品として
グローバリゼーションの競合に曝されてきました。
オランダやイギリスといった、その時々で勢力を誇った国を主な輸出国にすることで、
フランスの経済に貢献してきました。
覇権国家とワインの経済史を調べてみるのも面白そうです。
 
フランスワインが高い商品価値を誇るのは、産地ごとの個性を重んじる
政府の方針があるからだと言えるでしょう。
こうした土地が持つ特性を総称してフランス語ではテロワールterroirという語彙で言い表します。
一方で、アメリカやオーストラリアなどの新興国は、主にブドウの品種特性と
近代的な醸造方法や設備でフランスに対抗しました。
現在ではこうした双方の強みをお互いが共有するようになっていますが、
かつて、この二つが対決したことがあります。
「どっちが本当は美味しいのか?」ってなったんですね。
 
フランスワインVSカリフォルニアワイン
アメリカ建国200年を記念して、1976年に対決が実現しました。
さあ結果はいかに......!?
映画にもなっていてDVDがあります。
『ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡』
ネタバレなタイトルで残念!!(笑)
 
父と子の確執と和解、ヒロインとのけんかと仲直り、挫折からの成功など、
映画っぽい脚色が施されていますが、それでも「頑張れー」と応援したい気持ちになります。
こちらは、前回『ラマン/愛人』とちがって、だれと観ても安心。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
鈴木です。
 
私の住んでいるパリ14区には、モンパルナス墓地という広い墓地があります。
 
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ここモンパルナス墓地には、多くの著名人が埋葬されていて、案内所にはその場所が記された
お墓マップなるものが置かれています。
 
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手前M.D.というイニシャル、こちらは作家や映画監督でもあるマルグリット・デュラス(1914-1996)。
本名もイニシャルにするとDになるようです。
どっちかな?
作家であった彼女には、多くのペンが供えられています。
映画化された『愛人/ラマン』は日本でも話題になりました。
ちゃんとした映画ですが、見るときは一人で見たほうがいいかなー
 
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こちらはセルジュ・ゲンズブール(1928-1991)。
キャベツやメトロのチケット、これらも彼の作品とゆかりがあります。
 
私のやっている「フランス語圏文化論」という授業では、フランスのポップ・ミュージックを
扱うコーナーがあるのですが、そこで私は彼の歌を歌ったことがあります。
ゲンズブールさんは声が低いので、私でも無理なく歌えます。
 
そして、今回はじめて気付いたのが、こちら
 
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ジャンポール・サルトルとシモーヌ・ド・ボーヴォワールのお墓。
墓石のところどころに「赤い何か」が見えませんか?
アップにしてみましょう。
 
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わかりました?
 
・・・・・・キス・マークですね!!
 
実存主義哲学者のサルトルと、『第二の性』のボーヴォワールは、正式な結婚こそしなかったものの、
生涯を通じて二人は寄り添いました。
そんなラブリーなエピソードが偲ばれます。
 
ところで、こうしてお墓を訪ね歩いていると、なにか故人が語りかけてくるような気がしてきます。
「さあ、君はどう生きるの?」ってね。
 
さてさて・・・・・・
 
「まだまだこちらに未練があるので、もうしばらくそちらでお待ち下さい。」
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
鈴木です。
 
この棺が作られた当時の社会の様子を想像してみましょう。
 
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(ルーブル美術館にて鈴木撮影)
饗宴の場面、妻と見られる女性は、同様の姿勢で夫に優しく肩を抱かれて表現されています。
寄り添う二人がクッションにしている革袋、これには葡萄酒が入っていました。
きっと二人で分かち合ったのでしょう。
 
夫婦の生をしめくくるにあたって、こうした棺が作られる。
この社会に生きる女性は、地位も高く、きっと大切にされたのでしょう。
この夫婦棺は現在のイタリア半島中部にあたる場所にあった古代エトルリアのものです。
(作品の説明についてはルーヴル美術館のサイトを参照しました。)
 
ところで、だれにでも、たいした根拠もなく「きっとこうだ!」と思い込んでいることがありますよね。
 
あるでしょ。
 
そのひとつが核家族。
昔はおじいちゃん、おばあちゃんも一緒の大家族だったけれども、
今はパパ・ママ・子供だけの核家族が増えましたね、というように。
 
こうした思い込みはなかなか根が深く、西洋発の学問、私の思い当たるところでは経済学や
精神分析学もそうなのですが、昔は大家族で、それが近代になるにつれて核家族へ移行する、
というイメージを抱いていまいた。
 
ところで、なぜ、核家族は近代性と結びついてきたのでしょうか。
 
それは西洋の歴史に原因があります。
かつて18世紀後半に産業革命が起こった頃のイングランドでは核家族が主流でした。
それで核家族こそ、この産業革命をもたらした要因のひとつ、
つまりは時代の先端を行くもの、と思われてきました。
 
そこにとんでもない説が飛び込んできたのが、つい最近。
エマニュエル・トッド氏の家族形態の変遷をめぐる研究。
トッド氏は、1951年生まれ、フランスの歴史人口学者です。
私も取材のお手伝いでパリのご自宅を訪問したり、氏のインタヴューを翻訳したことがあります。
 
彼の説明はこうです。
。。。。。。。。。。。。
 
昔々、ユーラシア全域は核家族に覆われていた。
この頃の核家族は、より大きな住民集団に属してはいても、一定の自主性を維持していて、
父と母と子から成る家族である。
この家族の特徴は、男女の労働の質は異なってはいたものの、
女性の地位がおおむね高かったということ。
 
ところが、ある時、このユーラシアの中心部で、直系家族という新たな家族システムが生じる。
これは一子による遺産の相続を特徴としており、父親の権威が強い家族形態を成す。
祖父母、その長男、その妻、子供からなる家族であり、戦前の日本などのイメージなどが近い。
そして、この直系家族が、やがて周縁部へ向けて伝播する。直系家族は核家族に比べると、
団結力と継承力に勝ることから、戦争や教育では、たとえ一時ではあっても、
核家族を凌駕するケースが多かった。
 
その後、さらにユーラシア中心では、共同体家族という新たな家族システムが生じる。
男兄弟と、そこに嫁いできた妻と子らが集まって暮らす大家族である。
これは現在のイスラム圏や中国の農村部に多く見られ。
この共同体家族も周縁にむけて伝播してゆく。
共同体家族は、さらに大きな家族集団であり、周辺にむけての影響力はより強かったからだ。
 
こうして、三つのタイプの家族、サイズとしては、大きい順に、共同体家族>直系家族>核家族、
これらが同心円状にユーラシア中心から周縁に向けて分布することになった。
 
つまり、後からできた大きい家族ほど、新しいものであって、一番小さい核家族は
最も古い家族形態となる。
 
一方、イギリスやフランスは、ユーラシア大陸の西の果てにあり、
したがって、両国ともこうした家族システムの伝播に曝される度合が少なかった。
家族システムの変化は、住人にとっては戦争状態や社会的混乱として表れ、
技術的な進歩や発展を抑止する。
そうした影響を最小限にとどめられたがゆえに当時のイングランドは
いち早く産業革命を成し遂げることができた。
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なるほど、要するに、イギリスは、ユーラシアの中心地から遠くにいたから、
あまり悩まなくって済んだってことね。
 
私のゼミでは、少子化や識字率の問題を考えるにあたって、
折に触れてトッド氏の著書を取り上げてきましたが、
この家族システムの変遷についても考えてみたいと思っています。
家族のつながり、父親の権威、女性の社会的地位、子の自立などについて、
私たちがなんとなくこうだと思い込んできたことが、実は、まちがっていたのではないか、
と気付かせてくれます。
 
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エマニュエル・トッド『家族システムの起源 I ユーラシア 上・下』石崎晴己訳、藤原書店、2016年。
多くの専門家を驚愕させた本ですが、難しくはありません。
だって家族の話しなんですから、だれにも思い当たることがあります。
 
白水社の月刊誌『ふらんす』2017年4月号(3月22日発売)に、本書の書評を書きました。
900頁を超える本の内容をわずか1000文字で紹介。
ピケティの時も大変だったけど、今回もなかなか手強かったなー。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科