枚方蔦屋(TSUTAYA)書店でのワークショップ「短歌したい!」にゼミ生とともに参加しました。
今回の記事は、私の記憶とメモに加えて、ゼミ生による取材にももとづいています。
事前に短歌を提出し、それを添削してもらうという形式のワークショップです。
短歌で大切なことはなにか? まずはこんな説明がありました。
文法:不自然さを避け、よみやすい歌を作る。
創造性:言いたいことをそのまま書かない。
強弱:「ここぞ」というところでは、インパクトのある表現で勝負。
では、実際の添削の模様を見てみましょう。
作者名はふせてあります。また、改行等はあらかじめ改めました。
(添削前) 見上げれば夜空一面花開く短命なはな寂しさ残る
「見上げれば」によって視線を上方に誘導しつつ、
「花火」という語彙を用いずに花火のことを表していることや、また、華やかな印象の上の句と、
寂寥の情感を宿す下の句にコントラスト(対比)があることが良い、というお話しでした。
一方で「短命」は漢語なので、これを和語にひらいて、さらに「寂しさ」という抽象的な言葉を避けつつ、
(添削後) 見上げれば夜空一面花開くどんなはなより短い命
とするとより良い歌になるというアドバイスでした。
なるほど、たしかに実感。
他の歌も添削前と添削後を並べてみましょう。
それぞれに表現の質と強度が向上していることが感じられますか?
(添削前) 夕涼み縁側となり君の場所風鈴の声届きはしない
(添削後) 夕涼み縁側となり君の場所風鈴の声とどまるばかり
(添削理由) 「届きはしない」の助詞「は」が強過ぎる。
(添削前) 日曜日ひとごみ紛れ見上げると父より高く夜に咲く花
(添削後) 日曜日ひとごみの中見上げると父より高く夜に咲く花
(添削理由) 「ひとごみ紛れ」がやや紋切り型なので、ニュートラルな表現に改める。
(添削前) 今年こそ痩せる痩せると言いつつも気が付けばまたほらリバウンド
(添削後) 今年こそ痩せる痩せると言いつつも気が付けばイチゴ味のマカロン
(添削理由) 「リバウンド」という抽象を具体物「イチゴ味のマカロン」に。
マカロンの形もダイエットの挫折を暗示する。
(添削前) 思い出す夜空に消える光の輪パッと輝くあの横顔と
(添削後) 八月の夜空に消える光の輪パッと輝くあの横顔と
(添削理由) 「思い出す」が冗長。「思い出したこと」を歌にするのが短歌だから。
ワークショップを通じて気の付いたことがあります。
こうした短歌での表現では、惰性や慣用表現に身を任せて、
無反省に言葉を置きにいくのは良くないということです。
フォーマットがあった方が、まあ、それで楽は楽だけど、それだけでは読み手の心は動かない。
つまりは本当の意味で伝わったことにはならないんじゃないかな。
時には精神を集中して「なんとなく」の誘惑に抗うことが大切なんだね。
こうしたことは他の言語表現一般にも言えそうです。
最後に、今回のワークショップでお世話になった歌人、鈴木晴香さんの短歌を一首。
非常時に押し続ければ外部との会話ができます(おやすみ、外部)
鈴木晴香『夜にあやまってくれ』
途中まではエレベーターの注意書きかと思っていたら、結句「(おやすみ、外部)」でがらっ
と雰囲気が変る。
擬人化した外の世界「外部」に向かって優しく「おやすみ」なんて、なにかが狂っている。
なんとも不思議な「非常時」だ。外界が寝静まった後に、箱の中の私はどうするんだろう?
内部の私or私の内部との会話が始まるのでしょうか。
2018年7月8日(日)、枚方蔦屋書店にて。
6月30日(土)に講演をしました。
タイトルは「ワインはなぜわかりにくいのか?――グローバリゼーションと産地主義――」です。
講演会受講者78名、テイスティング参加者46名、ご来場下さったみなさま、ありがとうございました。
当日の内容です。会場はC31教室。
第1部:世界と日本とワイン
第2部:フランスワインのプレザンス(存在感)
第3部:ワインにとっての理想郷とは?
第4部:新たな敵:資本主義グローバリゼーションの到来
――安ものワインの脅威
第5部:グローバリゼーションのさらなる試練
――フランス銘醸ワインついに敗れる?!
結論 :ワインはやはりわかりにくかった
フランスのワイン、とりわけ、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワインは、なぜ価格があれほど高いのか?
というテーマをフランスの歴史を振り返りながら考察しました。
鈴木ゼミ生2名による資料や台詞の朗読です。
講演後の質疑応答では、「スーパーに売っている無添加ワインはどうなのか?」や
「フランスワインの今後の可能性はどうなるのか?」など、多岐に渡る内容の質問がありました。
そして、会場を移してテイスティングのコーナーです。
銘柄を隠して、産地やぶどう品種を当てるブラインド・テイスティングです!!
職員の後藤さんによる試飲方法の説明も堂に入っていて、みなさん真剣に取り組んで下さいました。
こちらが正解のワイン。
フランスの他にも、ニュージーランド、オーストラリア、カリフォルニア州などワインの名産地が続きます。
6種のワインを開けて、さらに全員分のカップの注ぐのですから、なかなかの大変な作業です。
私が講演でお話しをしている間に皆さんが準備をしてくれました。
さらに、近隣で飲食店を経営する方や、ゼミ生にも助けてもらい、
テイスティングも無事終えることができました。
来場者からスタッフへの嬉しいねぎらいの拍手も頂きました。
他にも、地域活性化支援センターの柏原先生、研究支援課の職員の方々など、
多くのご支援があって実現した講演会&試飲会です。
みなさまありがとうございました。
これからも折りをみて実施してゆきたいと思っています。
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