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なにを真剣にやっているのかといいますと、題して、プチ卒論シミュレーション。
 
ゼミでは4年生で卒業論文を書くのですが、
 
ここでは、仮にこのテーマで卒論を書くとしたら、
 
みなさんなら、なにを調べて、どのように展開しますか?
 
というシミュレーション形式のワークショップです。
 
 
 
テーマはざっとこんな感じ。
 
1.食の安全  2.コミュニケーション断絶  3.男女機会均等
 
4.ブラック企業  5.少子化  6.外国語教育
 
7.移民  8.所得格差   9.防災
 
10.自然破壊   11.SNS濫用
 
 
 
どれも一見なんとかなりそうに見えるけど、
 
いざやってみると、一筋縄ではいかない問題だったりします。
 
5番の少子化は、7番の移民や、8番の所得格差とも関連していますし。
 
 
 
このうち一つが各自に振り当てられ、自分で考えたり、
 
スマホで調べたりしながら、1時間半後に発表という、
 
なかなかハードな展開です。だからこんなに真剣なんです。
 
 
 
夕食をはさみ、さらに新たなワークショップ。
 
今度は、嗅覚&味覚のトレーニングです。
 
 
 
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ゼミ長からのブドウ品種や試飲方法の説明を傾聴していますね。
 
ワインに使われているブドウの品種や、産地を推理してみよう、
 
というブラインド・テイスティングです。
 
 
 
3年生ですので、すでに皆さん20歳を過ぎてはいるのですが、
 
ほとんどのゼミ生は、ワインを飲み比べるのは始めてだったようです。
 
 
 
それでも、中には高い的中率を誇った人もいたので、
 
将来のソムリエ(ソムリエール)候補になりそうです。
 
 
 
ワインを飲む頻度と味の好みに相関性はあるのか?
 
という真面目なデータ収集の一環でもあります。
 
 
 
 
 
ところで、ワインだけではなく、大人の食べ物や飲物って、
 
最初から「あー美味しい!!」と思うことって少なくありませんか?
 
むしろ「えーなにこれ?」という違和感が先立つ。
 
でも、少し自分の好みを抑えて、我慢して味わったりしていると、
 
それをやがて美味しいと感じるようになったりする。
 
違和感が共感へと変っていく、そんな感じ。
 
どうやら、これって味の話だけではないようです。
 
感動するにも、下準備が要るってことかな。
 
みなさんにはそんな経験ありませんか?
 
 
 
2018年9月8日から一泊二日で、コープ・イン・京都でゼミ合宿をしてきました。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
枚方蔦屋(TSUTAYA)書店でのワークショップ「短歌したい!」にゼミ生とともに参加しました。
今回の記事は、私の記憶とメモに加えて、ゼミ生による取材にももとづいています。
 
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事前に短歌を提出し、それを添削してもらうという形式のワークショップです。
短歌で大切なことはなにか? まずはこんな説明がありました。
 
文法:不自然さを避け、よみやすい歌を作る。
創造性:言いたいことをそのまま書かない。
強弱:「ここぞ」というところでは、インパクトのある表現で勝負。
 
では、実際の添削の模様を見てみましょう。
作者名はふせてあります。また、改行等はあらかじめ改めました。
 
(添削前) 見上げれば夜空一面花開く短命なはな寂しさ残る
 
「見上げれば」によって視線を上方に誘導しつつ、
「花火」という語彙を用いずに花火のことを表していることや、また、華やかな印象の上の句と、
寂寥の情感を宿す下の句にコントラスト(対比)があることが良い、というお話しでした。
一方で「短命」は漢語なので、これを和語にひらいて、さらに「寂しさ」という抽象的な言葉を避けつつ、
 
(添削後)  見上げれば夜空一面花開くどんなはなより短い命
 
とするとより良い歌になるというアドバイスでした。
なるほど、たしかに実感。
 
他の歌も添削前と添削後を並べてみましょう。
それぞれに表現の質と強度が向上していることが感じられますか?
 
(添削前)  夕涼み縁側となり君の場所風鈴の声届きはしない
(添削後)  夕涼み縁側となり君の場所風鈴の声とどまるばかり
(添削理由) 「届きはしない」の助詞「は」が強過ぎる。
 
(添削前)  日曜日ひとごみ紛れ見上げると父より高く夜に咲く花
(添削後)  日曜日ひとごみの中見上げると父より高く夜に咲く花
(添削理由) 「ひとごみ紛れ」がやや紋切り型なので、ニュートラルな表現に改める。
 
(添削前)  今年こそ痩せる痩せると言いつつも気が付けばまたほらリバウンド
(添削後)  今年こそ痩せる痩せると言いつつも気が付けばイチゴ味のマカロン
(添削理由) 「リバウンド」という抽象を具体物「イチゴ味のマカロン」に。
                          マカロンの形もダイエットの挫折を暗示する。
 
(添削前)  思い出す夜空に消える光の輪パッと輝くあの横顔と
(添削後)  八月の夜空に消える光の輪パッと輝くあの横顔と
(添削理由) 「思い出す」が冗長。「思い出したこと」を歌にするのが短歌だから。
 
ワークショップを通じて気の付いたことがあります。
こうした短歌での表現では、惰性や慣用表現に身を任せて、
無反省に言葉を置きにいくのは良くないということです。
フォーマットがあった方が、まあ、それで楽は楽だけど、それだけでは読み手の心は動かない。
つまりは本当の意味で伝わったことにはならないんじゃないかな。
時には精神を集中して「なんとなく」の誘惑に抗うことが大切なんだね。
こうしたことは他の言語表現一般にも言えそうです。
最後に、今回のワークショップでお世話になった歌人、鈴木晴香さんの短歌を一首。
 
   非常時に押し続ければ外部との会話ができます(おやすみ、外部)
                      鈴木晴香『夜にあやまってくれ』
 
途中まではエレベーターの注意書きかと思っていたら、結句「(おやすみ、外部)」でがらっ
と雰囲気が変る。
擬人化した外の世界「外部」に向かって優しく「おやすみ」なんて、なにかが狂っている。
なんとも不思議な「非常時」だ。外界が寝静まった後に、箱の中の私はどうするんだろう? 
内部の私or私の内部との会話が始まるのでしょうか。
 
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2018年7月8日(日)、枚方蔦屋書店にて。
 
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
6月30日(土)に講演をしました。
 
タイトルは「ワインはなぜわかりにくいのか?――グローバリゼーションと産地主義――」です。
 
講演会受講者78名、テイスティング参加者46名、ご来場下さったみなさま、ありがとうございました。
 
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当日の内容です。会場はC31教室。
 
第1部:世界と日本とワイン
第2部:フランスワインのプレザンス(存在感)
第3部:ワインにとっての理想郷とは?
第4部:新たな敵:資本主義グローバリゼーションの到来
――安ものワインの脅威
第5部:グローバリゼーションのさらなる試練
――フランス醸ワインついに敗れる?!
結論 :ワインはやはりわかりにくかった
 
 
フランスのワイン、とりわけ、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワインは、なぜ価格があれほど高いのか? 
 
というテーマをフランスの歴史を振り返りながら考察しました。
 
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鈴木ゼミ生2名による資料や台詞の朗読です。
 
講演後の質疑応答では、「スーパーに売っている無添加ワインはどうなのか?」や
「フランスワインの今後の可能性はどうなるのか?」など、多岐に渡る内容の質問がありました。
 
そして、会場を移してテイスティングのコーナーです。
 
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銘柄を隠して、産地やぶどう品種を当てるブラインド・テイスティングです!!
 
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職員の後藤さんによる試飲方法の説明も堂に入っていて、みなさん真剣に取り組んで下さいました。
 
 
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こちらが正解のワイン。
 
フランスの他にも、ニュージーランド、オーストラリア、カリフォルニア州などワインの名産地が続きます。
 
6種のワインを開けて、さらに全員分のカップの注ぐのですから、なかなかの大変な作業です。
 
私が講演でお話しをしている間に皆さんが準備をしてくれました。
 
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さらに、近隣で飲食店を経営する方や、ゼミ生にも助けてもらい、
テイスティングも無事終えることができました。
 
来場者からスタッフへの嬉しいねぎらいの拍手も頂きました。
 
他にも、地域活性化支援センターの柏原先生、研究支援課の職員の方々など、
多くのご支援があって実現した講演会&試飲会です。
 
みなさまありがとうございました。
これからも折りをみて実施してゆきたいと思っています。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
シャンパーニュ地方オーヴィレール修道院内の碑、そこに眠るのは、かのドン・ペリニョン修道士。
 
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ヴェネディクト派修道士のドン・ペリニョンDom Pérignonは1668年にここオーヴィレール修道院の出納(すいとう)係に任命されました。
ドン・ペリニョンの生涯はフランス王ルイ14世(1638-1715)とほぼ重なり、当時はフランスがヨーロッパ大陸で権勢を誇っていた時代です。
 
ワインはキリスト教の儀式にとって欠かせないものであると同時に、当時の教会にとっては収入を得るための貴重な商品でした。
したがって修道士たちは並々ならぬ熱意をもってブドウを栽培し、ワインを醸造しました。
 
さて、シャンパンの発明者とされるドン・ペリニョン。
彼がシャンパンの発明に大きく貢献したことは確かなのですが、一方で、やや神格化されたことで事実とは異なる話も多いようです。
そうした中でも信憑性の高いエピソードは、彼が造ろうとしていたのが、なんと「泡の出ないワイン」だったということです。
シャンパーニュ地方は冷涼な気候の地域であり、秋にアルコール発酵を終えることのできなかったワインが、春になって再び瓶の中で発酵することがありました。
こうなってしまうとワインの質も安定せず、また、瓶内で発生した炭酸ガスの圧力で瓶が割れたりと危険です。
そうしたことがないよう、ドン・ペリニョンはさまざまな工夫を凝らしたそうです。
彼がシャンパンの質の向上に貢献したことは確かです。
ところが、彼の意に反して、当時の英国やフランスのサロンでは、発泡酒のシュワシュワとはじける泡の感じが大評判になったというのです。
 
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修道院は最寄りのエペルネ駅から車で10分ほどですが、この日は訪れる人も少なくひっそりとしていました。
 
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「修道士の小道」、市販の絵はがきにもこのアングルのものがありました。
 
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丘からはブドウ畑が見下ろせます。
黒ブドウが色づいています。
 
その世に名を轟かすドンペリことドン・ペリニョン。
こうした背景に思いを馳せると少しイメージも違ってきませんか。
以上、鈴木でした。
 
*ドン・ペリニョンについては、ヒュー・ジョンソン『ワイン物語』小林章夫訳、2008年、平凡社、中巻第21章「最初の完全主義者――シャンパーニュの誕生」(pp.125-147)を主に参照しています。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
ルーブル美術館やオルセー美術館など、パリには世界に名だたる美術館があるのですが、今回訪れたのは、そした巨匠とはまるで正反対のこじんまりとした博物館。
こちら何の博物館かと言うと、言語や言語学を扱った博物館で、名称をムンドリングアMundolinguaといいます。
 
この博物館、もちろん学術的な意義はあるのでしょうが、まあそれはそれとして、むしろ今回印象に残ったのは、随所に見られるシュールな要素や、巨匠には絶対ない「ゆるい」展示物です。
まさに博物館界のゆるキャラといった感じです。
 
 
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一昔前の散らかったオフィス?
いえいえ、これもれっきとした展示物です。
なんでも言語を記録する媒体の変遷の歴史なんだとか。
埃にもまみれて、時代感がリアルです。
 
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ホラーハウス?
どうやら発音のメカニズムの説明のようです。
展示に洋服用のハンガーを多用してます。
 
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いったいこれはなんでしょう?
魔除け?
よくよく見ていくと「言語は芸術artでもあり、情報infoでもある」という意義のあるご指摘。
それにしてもキューブ状のモビルはいったい何を意味しているでしょうか?
ここにもハンガーです。
 
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モノがあふれかえります。
どこ&なにを見たらよいのでしょう。
ここの通路を通ると、かなりの頻度で手すりに腰をぶつけます。
 
入場料もたった7ユーロ。
パリにお越しの際は訪れてみてはいかがでしょう。
以上、まもなく帰国の鈴木がお送りいたしました。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
アルザス地方ストラスブールを訪れました。
 
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伝統的な舞踏の披露。女性のリボンは、年齢や、未婚か既婚等といった女性のステイタスによってそれぞれ異なるタイプがあるそうです。
 
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お土産アルザスちゃん
 
ここストラスブールはドイツとの国境の都市で、町の風景もドイツに近い印象があります。
 
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何気なくシャッターを切っても、こんな写真が撮れます。
ストラスブールには世界遺産に登録された地区もあり、美しい町並みがいたる所に見られます。
 
すぐお隣がドイツですから、ドイツからの観光客も多く、フランス語とドイツ語の二言語が併記されている
掲示が多く見られます。
 
アルザス地方は、ドイツとの国境にあることから、両国間の戦争等によってドイツ領であった時期もありました。
そうした経緯のため、アルザスの人々には独自の帰属意識があるようです。
 
さて、アルザスはワインの銘醸地(めいじょうち)でもあります。
フランスでもとりわけ降水量が少なく、ブドウ栽培に適した土地なのです。
 
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丘の上から見下ろしたブドウ畑と古い町並み。奥に見えるのがヴォージュ山脈。
 
訪問したワイナリーのひとつAnna et André Durrmannでは、土壌による違いを確認しつつ試飲です。
また今回も本気です(笑)
 
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土壌を形成する石。これらによってワインの味に違いが生じると言われています。
 
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また、その年(ヴィンテージ)のブドウの出来具合によっても、ワインの味は大きく左右されます。
 
私には、ブドウの出来のそれほど良くない年の方が好ましく感じられたので、恐れながらもその事を
率直に言うと、ニヤッと微笑みを浮かべながら、それぞれの年の味の必然性について説明して下さいました。
収穫にベストな時期を見極め、そのブドウのポテンシャル(可能性)を最大に引き出す、
結果、年によって個性の異なるワインができる、というお話でした。
ブドウの出来の良し悪しは、ワインの良し悪しにそのままつながらないということなんですね。
わかりました、ムッシュ。
 
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ワインは工業製品一般とは異なり、生産ラインをフル稼働させたからといって生産量を急に増やすことができません。
畑で栽培されるブドウが原料ですから、土地からの影響を大きく受けます。
また、どこの畑のブドウを使ったのか、ということが重要な意味を持っていて、同じ品種のブドウを
使っても、特定の区画から作ったものが他よりも数倍高い価値を持つことも珍しくありません。
このワイナリーでは「環境をデザインする」するパーマカルチャーpermacultureの理念に根ざしたワイン生産を行っており、そうした環境への配慮についてのお話も興味深く拝聴しました。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
7月14日。
フランスの祝祭日のうちで、最も重要な日をあげるとすれば、おそらくこの日になるでしょう。
1789年7月14日、パリの民衆がバスティーユ牢獄を襲撃したことがフランス革命の発端となりました。
その後、さまざまな経緯はありましたが、この革命は、後の共和制樹立の発端となりました。
 
現在では7月14日はフランス共和国の成立を祝う日になっており、各地で様々なイベントが催されます。
その中でも、とりわけ大きな行事は、パリのシャンゼリゼ大通りで行われるパレードです。
 
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パレードの主な内容は、こうした軍事パレードですが、中でもとりわけ人気のあるのが消防士です。
この日の夜には、パリの消防署のいたるところで、一般の人も参加できる消防士さんとの
ダンス・パーティーがあります。
 
今年のパレードには、トランプ米大統がゲストで参加し、これがメディアの取り上げるところとなりました。
 
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また、この日からちょうど1年前には、南仏ニースでトラックを使ったテロ事件があり、
そのことを一面に取り上げる新聞もありました。
 
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エッフェル塔では花火が上がります。
自宅近くの見晴らしの良い通りに出て見ようとしたら、すでに多くの観衆が詰めかけていました。
 
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ここは私の住んでいる自宅からすぐ近くで、実はエッフェル塔からはかなり距離があるのですが、
それでもこの混みようです。
あらかじめ配備された警備員の姿も多くありました。
 
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この時期のフランスは、日が暮れて暗くなるのが夜10時過ぎです。
花火は夜11時頃から始まり30分程度続きました。
パリは東京に続く2024年オリンピックの招致活動を行っていて、
ここからはよくわからなかったのですが、そのことをモチーフにした花火もあったようです。
では、また近々。
鈴木隆芳
経済学部 経済学科

クイズ! 次の短歌Aと短歌Bでは、どちらが良い歌でしょうか?


A 空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋はそういう状態
B 空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋は散らかっている
(穂村弘さんの『はじめての短歌』を参照しています。)

 

鈴木です さりゅー

文章の書き方を指導をされたことってあるでしょ。
そんな時、先生に「もっと簡潔に」とか「もっとわかりやすく」とか言われませんでしたか。
たしかに、そうした簡潔で平明、かつビジネスライクな作文が求められる場面は少なくありません。
連絡のメールもしかり、集合の場所や時間などの用件が正確に伝われば事足りる。
休講の掲示もそうだね。何曜日何限が休講ってわかれば、ラッキーってなるし?!

でもね、そうではない世界があるんです。わかりやすくちゃだめな世界が。

 

冒頭の短歌のクイズ、正解はAです。Aの方が良い短歌。
Aの短歌「そういう状態」と言われるといろいろ想像が広がるけど、一方で、

Bの短歌「散らかっている」にはそんな余地がない。

「散らかっている」と言われれば「ああそうですか」と納得して終わり。

このAの短歌を作った平岡あみさんは当時中学生くらいだったそうです。

たしかに、「そういう状態」ってどんな状態なのかすごく気になりませんか?
なにかただならぬことが起こっている感じ。

 

でも、これって、ビジネス文書や実用書のお手本にかなり逆らってますよね。

一番肝心なところが「そういう状態」、つまりXのままなんだから。

詩歌の価値が、モノの交換を扱う経済の価値と異なるのはこの点です。

経済上のコミュニケーションの利点は、なんと言っても、

価値が貨幣というグローバルな交換価値に還元されること。

要するにHow much is this?というコミュニケーションのスタイルで、

国境を超えてだれとでも通じ合える。

どんな得体の知れないものでも、その値段がわかるとちょっとほっとするでしょ。

その一方で、私たちはこうしたグローバルな価値の世界とは別の

もうひとつの価値の世界にも属しています。

その世界とは、交換可能な価値に還元できない価値の世界。
唯一無二の価値の世界。

 

会社では課長の代理は必要。課長は同じ内容の仕事ができる人がいれば代わってもらえる。

でも、その人が帰宅してお父さんになると、お父さんに代わりはいない。
それに、お父さん代理がいつも控えている家庭なんて困るでしょ。
同じ人物が、ある時は課長で、ある時は父親というように二重の生を生きている。

 

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「ぼくにとって、きみはこの世界でたったひとりの男の子になるよ。
きみにはぼくが世界でたった一匹のキツネになるんだね。」
(サン=テグジュペリ『星の王子さま』より)

 

交換できる世界と交換できない世界、というように二重の世界が交錯している。

労働・生産・消費などは前者の交換できる価値をやり取りする世界。
交換できるからこそ価値が生まれる世界。こちらも生きていくのには不可欠。

 

その一方で、詩歌は交換できない価値を扱う世界。
他のもので置き換えることのできない唯一無二の意味や価値を重んじる世界。
その証拠として「××は○○を意味しています!」などと明言せずに、

肝心なことをXにしたまま読み手に差し出した方が良い歌になります。

ためしに下の二首でどこがそのXに相当するかわかりますか?

 

たちまちに君の姿を霧とざし或る楽章をわれは思ひき     近藤芳美
貪欲な兎をゲージに飼っておくそういう罪を毎日犯す     鈴木晴香

 

恋人の姿が霧に隠れた時、ふと聞こえてきた「或(あ)る楽章」って、

いったいどんなメロディーなの? それってだれのなんていう曲?

 

「貪欲な兎(うさぎ)」っていうけど、それってどんな兎?
その兎をおりに閉じ込めて飼うことって、いけないことなの? 
もしかしたら逮捕されちゃう?

 

とか、具体的にはわからないまま。

でも、そこがいいんです。いろいろ想像できちゃうし。
それに、この場合の想像って、でたらめな妄想とはちがって、ある程度は共有したり共感できる要素がありませんか? 
「あーあのことじゃないかな」と思い当たる。

こうした詩歌の価値について歌人の穂村弘さんが書いた本、『はじめての短歌』。

 

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鈴木ゼミの教科書の一冊。
短歌の入門書という形をとっていますが、あまりそんな感じはしません。
むしろコミュニケーションに悩んでいる人におすすめします。

コミュニケーション用の「伝わる言葉」と、詩歌の「印象に残る言葉」、

この二つの言葉の世界ってどうなっているの?ということがわかります。
ここぞという時に人に差をつけたい時のマニュアルです。意外なほど用途は広いね。
本書の書評を書きました。以下からダウンロードできます。こちらも是非。


鈴木隆芳書評、穂村弘『はじめての短歌』in「大阪経大論集」第68巻1号

鈴木隆芳
経済学部 経済学科
さりゅー 鈴木です。
私の住んでいるパリ14区。
いわゆるおしゃれなパリからは少し離れた庶民的な地区です。
 
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写真に撮るとそれなりに絵になるけど、普通のパリの町並みです。
それでも、あえて特徴をあげるとすれば、小売店から成る商店街が元気なことです。
 
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肉屋
フォアグラも日本に比べられたら驚くほど安い。
ソテーしてパンに挟んで豪快に食すもよし。
パテをアテにグラスを傾けるもよし。
 
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果物屋
なぜここにアスパラガス?! ややカオスな陳列ですが商品は充実しています。
スイカはフランス語でパステック!
勢い良く切るとそんな音が聞こえそうです。
 
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チーズ屋
本日のおすすめが看板に書かれています。
4品目の中にはイタリアやギリシアのチーズもあります。
こうしたチーズ屋では量り売りが基本です。
「少しでいいから」って言うのに、いつも大きく切ってくれちゃいます。
 
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行列のできるパン屋さん。
行列の理由は、パンが美味しいからと、お会計の作業がスローだから。
バゲット(フランスパンね)が1ユーロ(約124円)。
 
そして、こうした商店街の中にスーパーマーケットもあります。
 
 
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モノプリという大手チェーンのスーパー。
スーパーですから、もちろんここには肉も果物もチーズもパンも売っています。
それでも小売店にはお客が絶えません。
 
この界隈がことさら特別というわけではなく、こうした商店街がパリには多くあります。
場所によっては、マルシェ(市場)が出たり。
 
大手資本のスーパーと小売店が共存できているのには、さまざまな事情があるのでしょうが、
まあ、これもパリの魅力のひとつです。
 
あろー あびあんとー
鈴木隆芳
経済学部 経済学科
ぼじゅ
鈴木です。
フランスでは5月1日にスズランmuguetを贈る習慣があり、町のあちこちでスズランを売る人を見かけます。
 
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5月1日はまたメーデーでもあり、労働者が自らの権利を訴え、連帯を呼びかける日です。
 
それと前後して、フランスでは4月23日に大統領選挙の第1回投票が行われ、
マクロン氏とルペン氏が5月7日の決選投票に進むことになりました。
そして5月8日には両氏による決戦投票が行われ、マクロン氏が大統領に選出されました。
得票率は第1回投票ではマクロン氏23.75%、2位ルペン氏21.53%、
第2回投票ではマクロン氏66.08%、ルペン氏が33.94%。
 
予想どおりマクロン氏が勝ったとはいえ、極右政党である国民戦線のルペン氏が、
なぜ他にも有力な候補がいる中でこれだけの票を得たのかは少し考えてみる必要がありそうです。
 
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「ユーロは死んだ」顔写真横の発言
 
この新聞を読む限り、ルペン氏の経済政策上の主張はユーロからの離脱ではなく、
欧州中央銀行に対してのフランス政府の権限の拡大にあるようです。
氏が敵対視しているのは猛寧なグローバリゼーションmondialisation sauvageなのです。
 
昨年6月に英国ではユーロからの離脱Brexitが可決されました。
また、米国では移民に対してトランプ大統領が否定的な発言を繰り返してきました。
 
グローバリゼーションを下支えしてきたのは、国境を超えた通貨や労働力の流動性ですが、
今、こうした流れに変化が起きています。
 
1980年代のサッチャー政権やレーガン政権が推奨した自由主義経済は、
市場原理を優先する一方で、社会保障費を削減してきました。
税金を安くして、医療費や保健などの分野で個人の裁量の域を拡大したのですね。
そこで実現したのが「小さな政府」。
法人税も安くなるので、企業活動にとっては都合の良い事態です。
法人税の安い国の企業と、法人税の高い国の企業が競合した場合、当然前者が有利ですから。
したがって、政府は自国の企業の国際競争力を高めるために「減税競争」をするはめになりました。
税率が下がれば、貧富の格差の拡大が生じます。
税金で持っていかれる額が少ないほど、手もとに多くのお金が残りますね。
格差じたいが良いのか悪いかは判断の分かれることですが、国への税収が減ることで
社会保障などの再分配に回る予算も減るとすれば、下位の階層に属する人にとっては、
よりシビアな社会になります。
富むものだけが質の良い教育や充実した医療を享受できる社会。
 
『21世紀の資本』の著者トマ・ピケティはこうした事態を危惧しつつ、
富裕層の資本の実態を明らかにすることで、課税による再分配を促すべきだと主張しています。
 
また人口学者エマニュエル・トッドは、英国のEU離脱、フランスでの国民戦線の支持拡大、
米国のトランプ政権は、国家(ネイション)が役割を回復しようとする中で起きた
一連の動きであると言っています。
トランプの大統領のかつての対立陣営のバーニー・サンダースが主張していたことも、
表面上は対立しているかのように見えて、実際は社会保障という国家機能の回復であると。
こうした動きは、グローバリゼーションに傾倒しすぎた社会に対しての反発であると言えそうです。
 
グローバリゼーションが目指す市場経済と、国家が担う再分配は
バランスを取りながら社会を形成してきたことは確かです。
その一方だけに過度に傾倒すとどんな困った問題が生じるかについても様々な教訓があります。
 
したがって、各所に見られるグローバリゼーションに待ったをかける動きを
反時代的なものや退行的なものと一概に決めつけるのは早計なようです。
 
こうしたテーマを扱った
エマニュエル・トッド『問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論』堀茂樹訳(2016年)
の書評を書きました。
無料で何度でもダウンロードできます。よかったら読んで下さい。
 
鈴木隆芳
経済学部 経済学科